[デザイナー自己紹介]
神田祐子2021.11.02

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手のひらサイズから10t トラックサイズまで

私は2012年に入社後、ETC光ビーコンアンテナ(※1)や2輪車用ECU(※2)、メータなどの小型の車載製品から、10tトラック用冷凍機のような大型のハードウェアデザインまで経験。将来の自動運転車両での快適性を向上させる車室内空間を提案する車両HMIコンセプト開発にも携わりました。また、2015年以降はBtoC向けの車載用プラズマクラスターイオン発生機の製品デザインとカラーデザインを担当し、商品企画から販売先の議論まで含めた開発に参加しました。 2018年からはデンソーの電動化技術ブランドELEXCOREの製品デザイン、モーターショーなどにおける展示・発信活動に参加し、2019年からは主に農業分野などのロボティクスデザインに取り組んでいます。

※1 一般道にあるVICS光ビーコンから、渋滞や事故、警報情報などをリアルタイムで取得するアンテナ
※2 Electronic Control Unitの略。車両の各種システムを制御するためのコンピュータ。

技術に寄り添った、嘘をつかないデザインが大事

事業部からのデザイン依頼で、デンソーの技術が実現する「うれしさ」をカタチにしてほしいとよく言われます。そこで、カタチを考える作業に入る前にその技術で世の中の人の生活がどう変わっていくのか、技術について理解し、何を重点的に発信すべきかを開発者と腹を割って会話し整理することがあらゆるプロジェクトにおいて重要と実感しています。製品デザインという分野の線引きをなるべくせずに、技術を魅力的に伝えるために、造形、使い勝手、ブランド発信、様々な可能性を考えた上でデザインすることを心がけています。整った見た目の製品を作り上げるだけでなく、その技術に寄り添った、最適解のデザインに取り組みたいと思っています。

モノの形と使われ方をデザインしたかった学生時代

大学が美大ということもあり、木工や工芸系の製作が多く、つなぎ姿で木屑にまみれて手作業でものを作ることが好きでした。学生時代は「所作」をテーマに座る姿勢やモノを置くしぐさに意識を向ける木工家具や持ち方を誘導する器などを主に製作していました。直観的に使い方を誘導する難しさを学んだように思います。加えて、F1車両のようなメカ系も見ることが好きで、漠然と動くモノをデザインできるようになりたいという車両分野への憧れはありました。正直なところ車両部品の業界はあまり知らなかったのですが、分野のニッチさと、求められる性能がシビアな製品の形を開発者と一緒につくり上げるデザインの仕事に魅力を感じ、エントリーしたのが入社のきっかけでした。

専門性が多様でチームごとに仕事が大きく変わる

事業の幅の広さから、依頼される内容は十人十色です。答えが出ていない漠然とした相談から、何年もかけて技術から開発するもの、新たにブランドを考えるもの、日程が短く瞬発力が求められるものまで、同じ依頼はほぼ来ません。何が出来るかという話から始まり、専門性が異なるメンバーが集まり、試行錯誤しながら新たなアプローチにチャレンジさせてもらうことができる組織だと思います。私も様々な業務を経験していますが、毎回業務が新鮮で常に自身のスキルや知識をアップグレードすることが求められる良い意味での緊張感があります。

魅力はどこまでも探求できる仕事の幅の広さ

デンソーは、コストと性能の両立が必須のシビアな製品づくりが求められるBtoB企業です。車両への搭載後は見えない部品も多く、それらの外観を整えるデザインに、コストを割く意味が理解されにくい仕事も多々あります。しかし、スタイリングだけでなく部品レイアウトまでデザインすることで、2輪車用ECUや車載センサの放熱性の向上や軽量化の可能性まで提案することができました。だからこそ、一見デザインの仕事に見えないような定量的な分析やリサーチから始め、開発者と製品の在り方を会話し、デザインの仕事の貢献範囲を広げていく活動も重要となります。決められた仕事の枠が無く、どうデザインするかを提案できる仕事の進め方は魅力的に感じます。また担当した製品が1部品として車両に搭載されているのを見つけると、こっそり嬉しい気持ちになれることもやりがいに繋がっています。