CREATORSʼ TALK
開催レポート2025.01.28

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2024年12月2日(月)デンソー名古屋オフィス15F CraftBaseで
「持続可能な社会の実現を加速させるアーティストやデザイナーの視点と役割の探究」をテーマに、株式会社レアさんよりご紹介いただいたデンマーク在住のアーティスト、パべルス・ヘッドストロームさんをお迎えし、クリエイターズトークを開催しました。
クリエイターズトークはデンソー社内で不定期で開催している、様々な分野で活躍されているアーティストやデザイナーをお迎えし講和や社員と対話をしていただく場です。

このイベントは、持続可能な未来を築くためのクリエイティブな視点や具体的な方法を探ることを目的にし、さまざまな部署の社員が参加。新しいアイデアや視点を共有する場となりました。

「DENSOクリエータートーク」というタイトルのスライドが表示されたプレゼンテーションの様子を撮影した写真です。会場にはスクリーンの前に登壇者が立ち、スライドを操作している様子が写っています。スクリーンにはイベント名や日付が記載されています。登壇者の前にはパソコンが置かれ、講演が進められていることがわかります。また、手前には座って話を聞いている参加者の姿も見え、机の上にはノートパソコンや資料が置かれています。会場の背景にはガラス張りのカーテンや天井の空調設備が見え、モダンな会場で行われているイベントであることが伝わります。

第一部

第一部はパべルスさんの、自身の経験や考え方をもとに実際に行ってきたプロジェクトについて語っていただきました。

3人の登壇者が座って話している様子を撮影した写真です。右側にはスクリーンがあり、ゲスト講師としてパベルス・ヘッドストローム氏の紹介スライドが表示されています。スクリーンには、彼の顔写真とともに、建築家・コンセプトデザイナーとしての業績やデザインアワード受賞歴などの詳細が記載されています。  左側の登壇者は発言しているような様子で、他の2人は話を聞いています。手前には参加者が写っており、スクリーンに注目している様子です。テーブルの上にはノートパソコンや飲み物が置かれ、リラックスした雰囲気の中でプレゼンテーションが進行していることがうかがえます。背景にはガラス張りのカーテンや木製の仕切りが見え、モダンな会場でのイベントであることが伝わります。

パベルスさんは「良いコラボレーションには、良いコミュニケーションが欠かせない。多様な考えや背景を持つ人たちと一緒に取り組むことで、新しいアイデアが生まれる」と言います。
また、互いにリラックスして話せる環境を作り、お互いのスキルを認め合うことが、プロジェクト成功の鍵になるとも語りました。この視点は、日々の業務においても活用できる非常に実践的なアドバイスと言えると思います。

3人の登壇者が座って話している様子を撮影した写真です。中央の2人は、前を向いてパソコンやタブレットを操作している様子で、右側の男性は発言中のようです。左側の女性は話を聞いている様子で、手元にメモを持っています。  テーブルの上にはノートパソコンがあり、ラベルやステッカーが貼られているのが特徴的です。また、床には緑色のペットボトルが置かれています。背景には透明なカーテンや木製の仕切りが見え、明るい会場内の雰囲気が伝わります。画面右側にはプロジェクターで投影されたスライドが部分的に見えています。手前には参加者の背中がぼんやりと映り込んでおり、和やかなイベントの様子がうかがえます。

自分が情熱を持てるテーマを選ぶ

パベルスさんは「心から興味を持てる問題をテーマにすることが大事」と語ります。情熱を持てるテーマなら、解決策を考えるのが楽しくなり、より良いアイデアが生まれるからです。
彼は「自分が関心を持てるテーマを選ぶことで、他の人を巻き込む力が生まれる」とも述べており、これはチーム全体のモチベーションを高めるヒントになりそうです。

スライドを背景に、登壇者がディスカッションを行っている様子を撮影した写真です。右側の男性が発言しており、手を軽く上げながらジェスチャーを交えています。左側の女性はノートにメモを取りながら話を聞いている様子です。手前には参加者のシルエットが写り込み、イベントの対話的で集中した雰囲気が伝わります。会場内は明るく、透明なカーテンが背景に見えることから、開放的な空間で行われていることがわかります。

Fog-Xジャケットとサステナブルなデザイン

パベルスさんは、自身の代表的な作品のひとつである「Fog-Xジャケット」を紹介しました。FOG-X(フォグ・エックス)は空気中の霧を集め、水を生成するバックパック型デバイスです。
レクサスデザインアワードを受賞したこのデバイスは、その後ジャケット型に進化しました。

この作品は、空気中の水分を集めて飲料水を生成するというユニークなコンセプトを持っています。

彼はこのデザインについて、「ただのアイデアではなく、実際に環境問題の解決に役立つツールとして開発した」と説明しました。

そして、このプロジェクトを通じて、持続可能なデザインがどのように実現可能であるかを語り「Fog-Xジャケットは、環境に優しい素材を使いながら、効率的な技術を取り入れた結果生まれたものです」と強調しました。この話に参加者は大きな興味を持ち、質問も飛び交いました。

プロジェクターでスライドが表示されている会場の様子を撮影した写真です。スライドには、防護服やジャケットのデザインが中央に大きく描かれ、その周囲に「H2O Straw」「Shelter Port」「Radical Mesh」など、デザインの各要素を説明するラベル付きの画像が配置されています。画面左下には登壇者の一部が映っており、手元の資料を使いながらスライドの内容を説明しているようです。背景には透明なカーテンが見え、モダンな会場であることがわかります。このスライドは、特定の製品やコンセプトの詳細を視覚的に説明するために使用されていることが伝わります。

16のデザインプロセス

パベルスさんは自らが実践する「16のデザインプロセス」を紹介しました。このプロセスは、彼が長年の経験を通じて編み出したもので、創造性を引き出す具体的なステップを示しています。
以下はその一部です

・アイデアを紙に書き出す
・チームでブレインストーミングを行う
・小さなプロトタイプを作成してテストする
・フィードバックを得て改善する
・デザインを実際の環境で試し、実用性を確認する

このプロセスは、どのステップも重要であり、一つひとつ丁寧に進めることで、より良いデザインが生まれると説明しました。また、「失敗は学びの一部」とし、うまくいかなかった場合もプロセスを振り返りながら進化させることが大切だと強調しました。

プロジェクターに「Design Process」というタイトルのスライドが表示されている会場の写真です。スライドには、12のステップがイラストで示されており、それぞれのステップがデザインプロセスの具体的な要素を表しているようです。イラストは簡略化された手描きのスタイルで、視覚的にわかりやすくデザインプロセスを説明しています。 左側には登壇者が写っており、スライドを参照しながら説明を行っている様子が見られます。このスライドは、プロジェクトの進行方法やクリエイティブなアプローチを共有するためのものと思われます。

会場の参加者が話を聞いている様子を撮影した写真です。5人の参加者が椅子に座り、メモを取ったり資料を持ちながら、真剣に発表や議論に耳を傾けています。右端の男性はマスクを着用しており、ノートにメモを取っています。

ストーリーの力

講演の中で、パベルスさんは「ストーリーがデザインを支える」とも語りました。Fog-Xジャケットのように、「このジャケットを着れば、水を自分で作れる」というシンプルで覚えやすいストーリーが、多くの人の興味を引いたそうです。ストーリーを通じてデザインの目的や価値を効果的に伝えることが、成功の秘訣だと強調していました。

ストーリーは、デザインをただのアイデアではなく、人々の心に響くものに変える力があります。パベルスさんの講演を通じて、わたしたちは「自分のアイデアをどう伝えるか」を考える大切さを学びました。

第二部 Q&A

第二部では、株式会社レアさんとパベルスさんにデンソーのHXをメインに紹介した後、当日参加者の方からいただいた質問に回答してもらいました。

このセッションでは、日々の業務で直面する課題や疑問について、具体的なアドバイスを得ることができる貴重な機会となりました。

ホワイトボードに貼られた複数の黄色い付箋が写っている写真です。それぞれの付箋には手書きでイベント中に出された質問が書かれています。

Q. サステナブルな幸福についてどう思いますか?

A. サステナブルな幸福を追求するには、言葉の選び方が非常に重要です。
現在、多くの企業が『サステナビリティ』や『幸福』という言葉を使っていますが、時にはこれが中身の伴わないものに見えてしまうことがあります。本当に持続可能な社会を実現するには、具体的で行動に基づいた言葉を使う必要があります。また、日本文化に根付く禅や神道のような哲学も、この目標を達成するための重要なヒントを提供してくれるでしょう

パべルス氏が発言をしている様子を撮影した写真です。黒いベストとカジュアルな服装で、座りながら手を使って説明をしています。背景にはスクリーンがあり、プロジェクターで何かが投影されています。スクリーンの右端には付箋が貼られており、質問に回答している様子がうかがえます。手前には他の参加者の後ろ姿が写り込んでおり、全体的に対話的で集中した雰囲気が感じられます。

Q. 先鋭的な問いを投げかけるスペキュラティブデザインと、現実的な問いを解決するトランジションデザインのどちらに注力すべきでしょうか?

A. スペキュラティブデザインは未来の可能性を探る上で非常に有益ですが、現実的な課題を解決するトランジションデザインも同じくらい重要です。私自身のアプローチはその両方を組み合わせています。アイデアを投げかけるだけでなく、それがどのように実現可能かをプロトタイプで示すことを重視しています。ですので、デザイナーはその状況や目標に応じて両方を適切に活用するべきです

Q. 創造のプロセスにおいて、失敗や希望についてどう考えますか?

A. 私はデザインのプロセスを始める際、強くて希望に満ちたストーリーを作ることを心掛けています。そのストーリーには、新しい視点やワクワクするようなデザインソリューションが含まれているべきです。そして、デザインプロトタイプを作成し、最終的には実際の環境でテストと記録が可能な包括的なプロトタイプに仕上げていきます。たとえプロトタイプが効率的に機能しなくても、しっかりと記録が残っていてストーリーが明確であれば、それは失敗とはみなされません。つまり、アイデアがしっかりしていれば、失敗のリスクは非常に小さくなります

数人の参加者が椅子に座り、真剣な表情で発表や議論を聞いている様子を撮影した写真です。中央の男性と右側の女性は正面を向いて話に集中しており、女性の膝の上にはノートパソコンが置かれています。左端の男性は腕を組み、ややリラックスした様子です。

Q. 創造の行き詰まりを乗り越えるための哲学や方法はありますか?

A.創造の行き詰まりを解消するために、以下の方法をお勧めします

 1.散歩をすること
 2.一日休息を取ること
 3.禅の瞑想を行い、リセットして新しい視点を得ること
 4.他のクリエイターと問題について話し、別の視点を得ること
 5.思考を一時的に止めるような身体的活動を行い、脳をリフレッシュさせること

Q. デザインへのアプローチを見直すきっかけとなった経験を教えてください。

A. 数年前、自分一人でデザインを作り上げて、地球や人々に大きな影響を与えることができると考えていました。しかしその結果、非常に大きなプレッシャーを感じ、最終的には燃え尽きてしまいました。何か月も病気になり、働くことも生活を送ることもできなくなったのです。一年ほどかけて回復する中で、深く考えました。そして、環境や社会に真の影響を与えるには、コラボレーションが必要不可欠であると気付きました

イベント会場で、参加者と思われる男性が前のめりになりながら話を聞いている様子を撮影した写真です。男性は眼鏡をかけ、落ち着いた色合いの服装をしています。真剣な表情が印象的で、議論に深く集中していることが伺えます。

Q. コラボレーターとのつながりをどうやって作るべきですか?

A. 良いコラボレーションは、良いコミュニケーションから始まります。ですから、まずはご自身のコミュニケーションスキルを高めることをお勧めします。さまざまな背景や文化、職業を持つ方々とコミュニケーションをとる練習をしてみてください。次にどのような方とコラボレーションすることになるかわかりませんので、そうした練習を通じて多様な候補者と出会うチャンスが広がります。また、リラックスして話せて、お互いのスキルを認め合える相手を選ぶことが重要です。そうすることで透明性のある率直なコミュニケーションが可能となり、プロジェクトのスピードや効率、成果が向上します

Q. 多くの問題の中でどのようにテーマを選べばよいでしょうか?

A.ご自身が最も関心を持ち、頭から離れない問題を選ぶのが良いと思います。その問題に対して解決策や提案を考える情熱を持てるかどうかが重要です

3人の参加者が座って議論に参加している様子を撮影した写真です。中央の男性が手を広げながら話をしており、他の2人がその発言に耳を傾けています。全員がネックストラップを身につけており、イベントやワークショップの参加者であることが分かります。右側の男性はマスクを着用しており、黒い服装で落ち着いた雰囲気を醸し出しています。左側の男性はPCを手に持ちながら、発言を聞いている様子です。背景には机や椅子が並べられた会場の一部が見え、カジュアルながらも集中した空間であることが感じられます。この写真は、参加者同士の積極的な意見交換の一場面を捉えています。

Q.将来のデザイナーやアーティストに教えたいことは何ですか?

A. 以下のことを教えたいです

・より批判的であること
・より遊び心を持つこと
・自分の人間性やデザイナーとしての可能性を最大限に引き出す方法

イベントの終了後に撮影された集合写真です。登壇者や参加者と思われる15名が並んでポーズを取っています。中央には登壇者が立ち、その周囲に他の参加者が立ったり座ったりしています。ほとんどの人が名札を身につけており、イベントに参加したメンバーであることが分かります。参加者の表情は和やかで、イベントが成功裏に進行したことをうかがわせます。前列には椅子に腰掛けた人もおり、リラックスした雰囲気の集合写真となっています。

イベントを通じて感じたこと

このイベントは、デンソーデザイン部のメンバーが新しい発想を得るきっかけとなりました。特に「情熱を持つこと」と「ストーリーの力」の話は、聞き手にとって印象深かったようです。パベルスさんが「小さなチームでも、日本から世界へ発信できる力がある」とエールを送ってくださったことも、参加者の心に響きました。

今回のイベントを通じて、私自身も多くの気づきを得ることができました。社内外の皆さんとともに、新たなアイデアや視点を共有し合うことで、今後の業務やプロジェクトに活かせる確かな手応えを感じています。
この経験を基に、デンソーからより多くのクリエイティブなプロジェクトを発信し、持続可能な社会の実現に向けてこれからも新しい価値を生み出す挑戦を続けていきたいと思います。

登壇者プロフィール