デンソーデザイン部では、2022年頃から感性品質の解き明かしに取り組んでいます。
製品やサービスが人にどのような印象を与え、どのような感情の動きを生むのか。そうした目に見えにくい「感じ方」を、より深く理解しようとする試みです。
これまでに私たちは、アンケートやインタビューといった主観的な評価に加え、感情や印象の変化によって生じる生体反応の計測など、様々な評価手法をトライしてきました。
今回はその中から、最近取り組んでいる脳波計測をレポートします。
今回は、「視覚」「聴覚」「触覚」の3つの感覚に着目し、それぞれに働きかける素材を用意しました。
人が何をどう感じ取るのかを、多面的に確かめる試みです。
・視覚
視覚では、感情の動きが表れやすそうな映像を用意しました。
たとえば、突然ピエロが現れるような、驚きや怖さを感じさせる映像。
一方で、赤ちゃんが幸せそうにしている、見ているだけで気持ちがやわらぐ映像も準備しました。
異なる印象に対して、生体反応にどのような違いが表れるのかを見ていきます。
・聴覚
聴覚では、川のせせらぎなどの自然音を用意しました。音は、気分や印象に大きく影響します。
自然音を耳にしたときの落ち着きや心地よさが、計測結果にどう現れるのかも注目点です。
・触覚
触覚では、手で触れて違いを感じられる素材をそろえました。
フワフワした毛、べたつきのある布など、触れた瞬間に印象の差が立ち上がるものばかりです。
「心地よい」「少し苦手」「触れ続けたい」「違和感がある」──
触覚は、人の好みや感情が表れやすい感覚のひとつです。
素材ごとの生体反応の違いも、興味深いテーマでした。
脳波計測というと、装着そのものが気になりそうな印象を持つかもしれません。
この計測器も、前頭葉付近の微細な電気信号を捉えるため、はちまきのように頭に巻いて使用します。
はじめは気になるのではと思っていましたが、実際に装着すると印象は変わりました。
装着後はほとんど気にならず、時間が経つと存在を忘れるほど自然で、計測そのものに集中できました。

また、人の反応を見ていくうえでは、ベースの状態が一人ひとり異なることも大きなポイントでした。
そのため、数値そのものを比較するだけでなく、ベースの状態からどのような変化が起きたかを見ていくことが重要になります。
さらに、その変化量や反応の現れ方にも個人差があります。
人の感性を捉えるには、同じ刺激に対する共通点だけでなく、それぞれの人にとってどのような変化が起きたのかをあわせて見ていく必要があります。
こうした点も、脳波計測の面白さであり、感性品質を読み解くうえでの大切な視点だと感じます。
今回の試行では、いくつか興味深い傾向もうかがえました。
たとえば聴覚刺激では、川のせせらぎのような自然音に触れた際に、副交感神経が優位になっている可能性を示す反応や、リラックスした状態に近い脳波の特徴が比較的目立つ場面が見られました。
また、突然驚かせる映像を視聴した場面では、緊張時や強いストレス時に現れやすい波形とみられる反応が比較的はっきり見られ、刺激の違いが生体情報にも表れる可能性を感じさせました。
さらに触覚刺激の中では、低反発のおもちゃに触れた際に、副交感神経が優位になっていることをうかがわせる変化や、脳波が安定した傾向が見られる場面もありました。
脳波計測画面例
感性は曖昧で、人それぞれ異なるからこそ面白いものです。
感性品質の解き明かしは、人が何に心を動かされ、何に心地よさや信頼を感じるのかを理解するための挑戦です。 今回の脳波計測も、その一歩です。
これからさらに検証を重ねながら、製品やサービスに宿る価値をより深く見つめ、デンソーらしい感性品質へとつなげていきたいと考えています。
使用した脳波計測機の詳細はこちら。
カメラと複数のセンサーと専用アプリケーションで構成さたマルチデバイス生体計測システム。 装着から計測までが簡単に行え、生体信号と動画を同期させて統合解析を行うことが可能。
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