2024年デンソーデザイン部が開催したインターンシップに参加した上念さん。デザインを学び、地域課題に向き合うプロジェクトに取り組んできた彼が、デンソーでの4日間を通して得た気付きや挑戦について語ってくれました。
―デンソーのことは知っていましたか?
上念:大学の先輩から社名を聞いたことがあるくらいでした。事前にデザイン部WEBを見た状態で説明会に参加したんですが、実際に話を聞くと、WEBで見ていた以上にいろんなデザインができそうだなと感じました。
五井:上念さんはポートフォリオ相談会にも参加してくれて、作品を見て話を聞く中で、とても面白いデザインをされていたので、ぜひインターンに来てほしいなと思っていました。
―学生時代はどんなデザインに取り組んでいましたか?
上念:デザインの対象になる現場に赴いて観察することで"こうだろう"という仮説を立てて、そこからもう一歩踏み込んだ考察をもとにデザインする─そんな姿勢を学生時代は大事にしていました。
―ポートフォリオをみていきましょう
一つ目は、海洋ゴミ問題に関するプロジェクトです。岡山の用水路から瀬戸内海へ流入するゴミが多いのでは?という仮説をもとに、実際にゴミがどう流れているかを確かめる企画で市民参加型のワークショップをデザインしました。
上念:二つ目は、古着屋さんのリニューアルです。オーナーから依頼をもらって、建築専攻の友人たちとチームを組んで設計と施工を担当しました。お店は移転してしまったんですが、一部の家具は引き継がれているみたいです。他にも器や椅子を作ったり、いろいろ試していました。
―インターンシップの事前課題は「生活の身近にある『人の移動』に関わる課題とそれが解決された理想の姿」でしたが、どのように課題を捉えていましたか?
上念:テーマとして思いついたのは、京都のオーバーツーリズムについてでした。観光客が多すぎることで、地域の人たちがちょっと疲弊しているような状況に対して、単純に「観光客を減らせばいい」という話ではないなと思っていて。観光客と地域住民の関係性が大事なんじゃないか、という視点で考えました。
―インターンシップは緊張しましたか?
上念:初めてデンソーの建物を見たときは「おお」ってなりました、駅からでも見えたので。緊張はしていたんですけど、「4日間乗り切れば終わり」と思っていたので、ある意味吹っ切れていて。そのおかげでリラックスして取り組めたように思います。
―初日のHXワークショップ※はいかがでしたか?
※HX=Human Experience
製品やサービスに関わるあらゆる人のことを考えてデザインする、デンソーデザイン部の考え方を体験するワークショップ
上念:最初のワークショップでデンソーデザインとしての考え方を提示してもらえたので、その中で自分の提案をスケールを広げて考えることができたのは大きかったです。提案の流れ自体は普段と変わらなかったんですが、プロダクトに関係するいろんな人の視点が入ったことで、提案が一段、二段と良くなったと感じています。
―メンターの五井さんとはどんなやりとりを?
上念:気軽に相談できる雰囲気を作ってくれた気がします。ちょっと思い詰めたタイミングで、五井さんがふっと来てくれて、お菓子をくれたんです(笑)。それがきっかけになって、判断に迷ったときには、自分からも何度か相談しに行った気がします。地域住民にとって"自分たちの場所"と感じられるエリアと、外から来た人が行き交うエリアとの"間"にあたる空間を提案できたら、という話をしていたときに「土間」というキーワードをポロッと言ったら、五井さんが「それ、いいね」と拾ってくれて。それが最終的に提案のタイトルにもなりました。
上念:最終発表では、京都のオーバーツーリズムをテーマに、観光客と地域住民の関係性に着目した提案をしました。現状の対策って、観光客の「数」をコントロールするものが多いんですけど、僕は「関わり方」にもっと可能性があると思っていて。そこで、道端での偶発的な会話が生まれるバス停を中心に、地域住民と外から来た人が自然に交わる"間の場所"をつくるというアイデアにしました。朝はパン屋、昼は屋台、夜は居酒屋になるような多機能な空間を想定して、地域のお店との連携や、ビジネスモデルまで構想しました。
提案の周辺にいるステークホルダーの存在にも気づけたのは、HXワークの成果だと思っています。
河原:これをインターン期間中に作ったんですよね。短期間とは思えないクオリティでまとめられていたので驚きました。
上念:素早く提案物を作れるようなツールは、あらかじめ準備していた記憶があります。プロダクトの細かい造形まではこの期間ではできないと思っていたので、「どういうふうに世の中が良くなるか」を皆さんにイメージしてもらえるようなビジュアルを用意していました。
―デンソーデザインインターンシップについてどう思いますか?
上念:インターンって、なんとなく“答えを出す場”みたいに思ってたんですけど、ここでは「一緒に考える」ってことをすごく大事にしてくれて。
HXワークもそうだし、周りの人とのやりとりの中で、自分の考えが深まっていく感じがありました。
もちろん緊張もありましたけど、ふり返ってみると、「デザインってこういう視点もあるんだな」とか、「考えたことをどう伝えるかって大事だな」とか、たくさんの気づきがありました。それに、いろんなバックグラウンドを持った学生たちが集まっていて、互いに刺激をもらえる環境だったと思います。
僕自身、最初はポートフォリオ出すのも不安だったし、「こんなんで大丈夫かな…」みたいな気持ちもあったんですけど、やってみたらちゃんと見てもらえるし、思っていた以上に対話があって。「まず一歩踏み出してみる」って、やっぱり大事だなと感じました。
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