HXカードを活用した共創ワークショップ2025.05.16

多様な世代や立場を超えた共創の場として、デンソーデザイン部はTEDxNagoyaU2025でワークショップを開催しました。10代から60代までの参加者がチームを組み、HXカードを用いて人やモノになりきりながら対話を行いました。

世代を超えた共創

2025年5月5日に開催されたTEDxNagoyaUにて、デンソーデザイン部は共創ワークショップを開催しました。今回のワークショップは、10代の中学生から60代の社会人まで、多様な世代の方々が参加し、性別・職業・経験を問わず、混成チームでの実施となりました。私たちがこのワークショップで目指したのは、「異なる背景を持つ人々が集まり、互いの視点を交差させながら、未来に向けた新たな気づきと価値を生み出す」こと。世代間のギャップや、考え方の違いを分断ではなく創造の起点と捉え、あえて多様な視点がぶつかり合う場を設けました。参加者たちは、デンソーデザイン部が開発した共創ツール「HXカード」を手に、各自の創造性を発揮しながら、自分とは異なる視点や立場になりきって対話とアイデア創出を体験しました。

「HXカード」とは?

HX(Human Experience)カードは、デンソーのデザイン部が開発した、「思考を拡げ、思考を反転させる」体験を促すためのツールです。共創の場において、多様なステークホルダーの意見や感情を理解し、創造的なアイデアに繋げることを目的としています。

■カードの構成

水色のお題カード:未来の社会課題や生活のシーンを想定したテーマカードです。チームで1枚を選び、その課題に取り組みます。

赤色のステークホルダーカード:家族、友達、動物、外国人旅行者、子育て世代、公共交通、自然環境など、様々な視点が描かれたカードです。参加者はこのカードの"立場"になりきって議論を行います。

■ワークの進め方

1.みんなで今から考えるテーマを決める
お題カードの中からチームで1枚を選択し、話し合うテーマを決めます。

2.ステークホルダーの視点を理解する
その立場の人やモノが、お題に対してポジティブに思っていることとネガティブに感じていることを想像しながら話し合います。

3.アイデアを発想する
複数のネガティブな要素がポジティブに転じるようなサービスや仕組みを考案。視点をひっくり返すことで、通常の議論では生まれにくいユニークなアイデアが生まれます。

4.チームでまとめて発表
最後にチームごとに発表し合い、互いの視点やアプローチを共有します。

多世代の化学反応

世代も価値観も異なる人々が、共通のテーマに対して協力しながら対話を深めることで、ワークショップの場には多くの「予想外」が生まれました。たとえば、「物流ドローン」というお題を選んだあるチームでは、最初は"モノを運ぶ"という物流視点で議論が進んでいました。しかし、赤色のHXカードで「野生動物」というステークホルダーが引かれたことをきっかけに、議論は新しい視点に展開します。「山の中に住む動物たちは、人間の活動によって生態系が脅かされる存在。だけど、もし山火事が起きたときに、ドローンが迅速に水を運んで火を鎮められるとしたら?」
そんな問いから、「物流ドローンは実は動物たちにとっても優しい存在になり得る」という気づきが生まれました。人間のための技術だと考えていたドローンが、「動物にとっての味方」へと視点を転換する瞬間。これはまさに、異なる立場を想像し、他者の価値観で語ることの可能性を示した象徴的なエピソードとなりました。また、普段は社会で"教えられる側"にまわりがちな子どもや若者たちの意見が、他のメンバーに大きな刺激を与える場面も多く見られました。多世代だからこそ出会えるアイデアや感性が交錯し、ひとつのチームとして形になっていく様子は、まさに共創の本質そのものでした。

今後の共創ワークショップ

デンソーデザイン部では、今後も多世代による共創の取り組みを広げていきます。2025年7月31日・8月1日には、多世代ワークショップ「CO-CREATION PROGRAM AICHI」を開催予定です。現在、中高生や大学生の参加者を募集中です。

このプログラムでは、HXの考え方を取り入れ、地域課題や未来のライフスタイルに対して、参加者同士が立場を越えて考え、語り合い、形にしていくプロセスを体験していただけます。
「自分とは異なる誰かの立場を想像し、行動につなげる」そんな体験が、新しい未来の第一歩になると信じています。