デンソーの将来ビジョンとして、無人工場で活躍する汎用型のロボットを制作し、2023年の株主総会で発表しました。
デンソーではこれまで、人とロボットが協力して働く姿を実現するために様々な取り組みをしてきましたが、次なる挑戦として完全無人化工場の構築に取り組みました。
このプロジェクトは、「世界一のモノづくり工場」という目標を掲げ、先端技術と統合管理システムを活用し、COBOTTA PROをベースにしたロボット制作です。
始まりは関係者の一言でした。「見たことのない気持ち悪いロボットを作りたい」というアイデアに触発され、デザイナーはその「気持ち悪さ」を探求し始めました。
それは、人には適さない未知の環境で生き残るロボットが醸し出す不気味さだと定義しました。
暗闇や暑い過酷な環境でも柔軟に対応し、危険な作業にも冷静かつ迅速に対応するロボットは未知の環境での自然淘汰を経て進化し、見慣れない姿であるため不気味な印象を人に与えるのだと。
当然、そんな姿のイメージは誰の頭の中にもありません。デザイナーは共感を得るため、未知の環境で働く場面をひたすら想像しイメージの制作を行いました。
何を描いても周囲からは「気持ち悪い」と笑いながら言われる妙な作業環境の中で、作業に応じてユニットを自由に編成する姿、タッグを組んでラインを形成する姿、さらには暗闇でも作業が行える装備をつけた姿など、様々な場面を想定しながらロボットの働く姿の可視化と、淘汰を繰り返すことでロボットデザインの探求をし続けました。
デザインのポイントは、複数のロボットアーム間のミニマルなジョイントと、群として存在したときの力強さです。参考にしたものは、海の岸壁で強い波を消波するテトラポットです。幾何学的なデザインと群として機能する印象は、身近には感じられず不気味さを伴いますが、同時に自然淘汰されたシステマチックなかっこよさをも醸し出せるとデザイナーが考えたためです。
最終的には、アームの可動域やバランスなども考慮したデザインにアップデートされましたが、個体番号やDENSO商材のロゴを入れることで、デンソーらしさや愛着が感じられるロボットに仕上がっていきました。
それをもとに、 Unreal Engine(リアルタイム制作ツール)を使った実際の動きのシミュレートを行うことで、気持ち悪さを超えた気持ちのよさを表現していきました。アニメーションを再生するとこれまでとは違った歓声が上がっていました。
目的であった株主総会では、ロボットのスケールモックを複数台準備し、来場者に触れてもらいながら未知の環境で働く新たなロボットの姿を身近に感じて頂くことができました。
Member
Creative Direction: Akira Okamoto
Project Management: Akira Okamoto
Project Lead: Kohji Ohyama
Product Design: Kohji Ohyama,Kohei Akiyama
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