TGDA
TECHNO GRAPHICAL DATA ARCHIVE2025.07.05

「TECHNO GRAPHICAL DATA ARCHIVE(TGDA)」は、DENSO DESIGNが外部の有識者やクリエイターとの共創を通じて取り組むプロジェクトです。 伝統工芸職人の「熟練の技術」をデジタルデータ化し価値を再発見・継承・活用するプラットフォームを目指します。

失われゆく​技術を​保存し
新たな​価値を​作る​ために​ 

世界中の伝統文化が天災、戦争、気候変動や人口減少などの原因により衰退の一途を辿っています。特に人の手技を要する伝統工芸の分野においては、技術革新による自動化/効率化が進み、伝統技術の消失は拍車がかかっています。日本では伝統工芸職人の高齢化が進み、匠伝の技や知識が記録/継承されないまま消失するケースが多くあります。
この様な文化消失の問題は、ここ日本にとどまらず全世界的に発生しています。伝統工芸職人の多くは70歳〜90歳の高齢者で「最後の技術」だった今も失われつつあるのです。このプロジェクトは伝統工芸職人の技能をデジタルデータ化し、世界中からアクセス可能なデータプラットフォームにアーカイブすることにより、ローカルな文化の保存と継承を促進させることをミッションとしています。

伝統工芸の​掛け合わせから​生まれる​イノベーション

かつて人と物の交流の要路だった東海道。その街道沿いには、土地に根ざした工芸や技術が今なお息づいています。TGDAではこの東海道を舞台に各地の工房を訪れ、熟練の職人たちとの対話を通じて、その技術と背景を理解しつつ、言語化が難しい口伝の技や知識の記録を進めています。こうした貴重な技術をデジタル化するために、立体的な視点データの取得や、モーションスキャンなどを実施し、最先端の技術を活用。職人の手の動きや制作過程、工房の雰囲気に至るまで、細部にわたる情報を記録しています。

このプロジェクトの最終的な目標は、収集されたデジタルデータを世界中からアクセス可能なデータプラットフォームにアーカイブすることです。このプラットフォームは、伝統工芸の技術を国際的に公開し、その継承を支援する役割を担い、国内外のクリエイターや、デジタル化による新たな可能性に関心を持つ若手の職人にとって、新たなコラボレーションや学びの機会を提供する拠点となることを目指しています。このプロジェクトが目指す世界観については漫画を制作したので、ぜひご覧ください。

DENSO DESIGNが取り組む意義

DENSO DESIGNが本プロジェクトを推進する根底には、​企業と​しての​普遍的な​存在意義と、​社会への​貢献に​対する​強い​意志が​あります。​

​「世界と​未来を​つなぎ、​新しい​価値の​創造を​通じて​人々の​幸福に​貢献する」
と​いう​企業理念のもと、​デンソーは​「幸福循環社会」の​実現を​目指しています。​そのビジョンに基づき取り組むT​GDAプロジェクトは、​技術と​文化を​つなぐ​架け橋と​なり、​人々の​心に​根ざした​"幸福のかたち"を​未来へ​伝えていく​ことを​目指すものです。​

伝統技術の​消失は、​文化的​多様性の​喪失と​いう​深刻な​社会課題です。DENSO DESIGNは、​自社の​持つ先端技術と​創造性を​活かし、​失われゆく​伝統技能を​記録・保存・発信する​ことで、​技術と​伝統の​融合に​よる​新たな​価値創造に​取り​組んでいます。​この​活動を​通じて、​文化の​継承だけでなく、​社会全体に​ポジティブな​循環を​生み出す​ことを​目指しています。​

この活動の核にあるのは、課題を多角的に見つめ、本質を掘り下げていこうとする探究の姿勢です。
「水のように​しみこむ」​ことを​理想とし、​プロダクトや​サービスだけでなく、​それを​取り巻く​人や​社会にまで​視野を​広げながら​活動を​展開しています。​
本プロジェクトは、​その​ビジョンを​体現する​ものと​して、​インハウスアーティストの​吉岡裕記が​主導しています。​

さらに​DENSO DESIGNでは、​外部の​伝統工芸だけでなく、​社内に​蓄積された​高度な​技能の​継承にも​取り​組んでいます。​
高棚製作所では、​卓越技能修練室に​所属する​技能五輪選手たちの​技術を​スキャンし、​社内の​「職人技」も​デジタルアーカイブ化。​
これは​技能教育への​活用を​視野に​入れた​ほか、​人材育成や​業務の​効率化にも​貢献する​取り組みです。​
このように、​TGDAは​デンソーの​中に​ある​技術と​文化を​見つめ直し、​その​価値を​未来へと​つな​ぐ​ための​実践の​場でもあります。​

挑戦を続ける。
技術の保存からものづくりの未来を拓くために

今後の挑戦として、TGDAで収集した職人技のモーションデータを活用し、匠の技術をデジタル上でシミュレーションすることにより、今までにはない技の法則やパターンを生成します。そして、ご協力いただいた職人の方々とも共に価値を創出・享受できる仕組みにしてゆきます。
また、AIの活用も視野に入れており、デンソーグループ製品であるロボットアーム「COBOTTA PRO」 と連動することで、新たな製造方法を模索するプロジェクトも推進します。
これは、伝統工芸とAI、ロボティクスといった最先端テクノロジーを融合させ、新しい価値を創出する、人とロボットのモノづくりにおけるパートナーシップの可能性を探るものです。
これにより、伝統技術の進化と新たな価値の創造の可能性に挑み、創造する場を築き、技術と文化が共存しながら進化する未来を目指します。

TGDAのデータプラットフォームは、消失の危機にある貴重な技術を記録・保存することで、地域に根ざした文化の保全と次世代への継承を支援いたします。
さらに、これらの技術を未来へと活かすため、異なる分野に携わる人々にもこれらの技術を活用いただけるようにし、異分野や用途の探求の機会をご提供してまいります。

今後の活動にご期待ください!

写真提供: FabCafe / © Loftwork Inc.