2024年1月にニューヨークへ行ってきました。本記事では、出張中に訪れた場所をいくつか紹介します。
吉田:ニューヨークに降り立って、まず一番最初に向かったのは、JFK国際空港から直結している、TWA Hotelです。もともと空港だったのですが、建物をそのまま活用して今はホテルとして利用されています。
TWA Hotel at New York's JFK Airport
MCR and MORSE Development have reignited the magic of Eero Saarinen's landmark 1962 TWA Flight Center at JFK Airport, restoring and reimagining it as a first-class hotel.
この建物は、エーロ・サーリネンによって設計され、空港として1962年にオープンしました。
TWA Hotelの外観は、大きな鳥のようなシルエットになっており、飛行のシンボルを表現しているそうです。
入口から中へ入ると、一気に広がる空間に引き込まれます。
入口側から奥に行くにかけてついているカーブが、自然な広がりを作っていて、空間の抜けがとても気持ち良いです。
ライティングもとても綺麗で、カウンターや時刻表などの場所は明るく、通路や休憩エリアの部分は落としてあって、空間のメリハリをつけています。
使われてはいないですが、時刻表が今も残されていました。パラパラとめくるタイプのもので、音も当時を感じさせます。
映画のセットに入り込んだような感覚になりました。
中央のホールから、左右にカウンターが別れていて、今はホテルのチェックインカウンターとカフェスペースになっています。当時は、手荷物預かりと、飛行機のチェックインカウンターとして使われていたみたいです。
カフェでは、サーリネンのチューリップチェアが使われていました。一本の足で支える造形になっているので、カフェのような椅子がたくさん置かれる場所に置くとすっきり見えますね。
1950年代、航空業界では激しい顧客獲得競争が繰り広げられていて、他社との強い差別化戦略が必要だったそうです。だからこそ、コーポレートカラーを強く印象付けるデザインや、印象に残る造形を積極的に取り入れた建築となっているんですね。
搭乗口へ続く廊下もコーポレートカラーが使用されています。カーブを描いた一本道の通路が、これから始まる旅への期待感を一層高めてくれそうですよね。今はこちらの廊下を進んで行くと、TWA Hotelの建築やインテリアについて展示された部屋へ行くことができます。
後に用事があったので、1時間ほどしかいられなかったのですが、丸1日くらいはそこにいたいと思えるくらいに素敵な場所でした。
小川:TWA Hotelのように美しく古典的な建築はニューヨーク市内でも数多くあります。
その中でもニューヨークを代表する駅舎を2か所見学してきました。
1か所目は、1913年にオープンし、一時は取り壊しの話も出ていましたが、現在でもニューヨークの主要な駅として使われているグランドセントラルターミナルです。完成してから100年以上も経過している駅ですが本当にきれいな駅舎でした。
星座が描かれた天井が特徴的ですが、昔はタバコのヤニと二コチンによって汚れていたそうです。12年間の修復を得て今の姿を保っています。どれくらい汚れていたかを駅を訪れた人に見てもらうため天井に当時の汚れを一部残しています。本当に真っ黒で驚きました。
また、訪れた際はウィスパリング回廊も体験してみるのをおすすめします。
見た目は普通の廊下ですが、対角同士にある柱の正面に立ち、その柱に向かって話しかけるとアーチ状の天井を伝い、向かい側にいる人へ声が柱の方から聞こえます。とても面白い体験なのでぜひ試してみてください。
もう一つ訪れたのは歴史的な建造物をリノベーションし新たに開業したモイニハントレインホールです。総工費16億ドル(約1,600億円)をかけ生まれ変わり、駅の向かいに建つジェームズ・ファーレー郵便局の一部を改装し建てられました。
グランドセントラルターミナルと大きく違い、天井が全面ガラス張りになっており、自然光によってとても明るく開放的な駅舎でした。昔の建物を再利用しているため天井の鉄骨などはそのままに、ガラスは幾何学的な配置がされており古風な感じの中にも新しさが感じられました。
日本の駅のサインなどはゴシック体を多く使用されていますが、モイニハントレインホールのサインはセリフ体を使用し建物の雰囲気を崩さず調和していました。
現在でも郵便局は稼働しており改装前の姿を見ることもできます。壁面や机の装飾が細かく駅とは違う印象を受けました。
吉田:Cooper Hewitt, Smithsonian Design Museumは、歴史的なデザインと、コンテンポラリーデザインに特化した施設です。
ちょうど私達が行ったときには、舞台デザイナーであるエス・デブリンの企画展が行われていました。オリンピックのセレモニーやNFLスーパーボールのハーフタイムショー、U2のスタジアムツアーなど、様々な場所で活躍しているデザイナーです。
An Atlas of Es Devlin | Cooper Hewitt, Smithsonian Design Museum
An Atlas of Es Devlin is the first monographic museum exhibition dedicated to British artist and stage designer Es Devlin (born 1971), who is renowned for work that transforms audiences.
An Atlas of Es Devlin | Cooper Hewitt, Smithsonian Design Museum
展示の冒頭は、テーブルの上に置かれたノート型のオブジェクトにプロジェクターで映像を映し出す演出から始まります。作業部屋を模した部屋からたくさんの作品が展示されたエリアへ移動することで、空間的・時間的な広がりを一気に感じました。
また、デブリンの作品の特徴のひとつである、観客が直接参加する仕掛けが散りばめられていて、展示空間そのものも楽しめるようなつくりになっています。
インスピレーションとなったテキストやビジュアル、ラフスケッチ、ペーパーモック、スケールモデルなど彼女の思想の過程を見ることができます。 彼女が作る抽象的な空間は、観客が自身の感情や記憶を投影しながら体験することができるように設計されています。
スケールモデルひとつひとつも彫刻作品のように美しく、繊細で丁寧な仕事に感動しました。
吉田:アメリカ自然史博物館は、ニューヨークを代表する施設の一つです。大きなクジラの模型が吊るされている様子を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
その自然史博物感館にできた新しい建物が、リチャード・ギルダー・センターです。
設計はスタジオ・ギャングです。
Gilder Center for Science, Education, and Innovation | AMNH
Spectacular architecture designed to spark your curiosity. New exhibitions and immersive experiences that reveal nature's hidden realms. A soaring space that connects to all the Museum has to offer.
有機的で洞窟のような印象の空間が、博物館の10棟を繋いでいて、博物館内の回遊性を向上させています。有機的な形で切り取られた様々なギャラリーが自然と視界に入って来て、より興味がわきます。
展示スペースは照明を落として、集中して展示物を見られる空間になっていますが、リチャード・ギルダー・センターの中央のエリアは対照的に吹き抜けで外の光が差し込む開放的な場所になっています。ここから、各展示スペースに移動するときのギャップで、より展示に没入していくわくわく感に繋がっているなと感じました。
この有機的な壁面は、型を使わずに手作業で作られているそうです。
1900年代に自然史博物館の博物学者である、 Carl Akeleyという方が発明した、「ショットコンクリート」という技法で、鉄筋に直接コンクリートを吹き付けて作られています。
こんなにも有機的で特徴的な建物が、周囲にある歴史ある建物と自然と馴染んで見えているというのもポイントです。
ギルダーセンターの両脇に建っている、古い博物館の建物と高さを合わせて作られていたり、ファサードの花崗岩のテクスチャーが回りの石積みの建物との親和性を高めていたりと、工夫が凝らされています。
小川:ハドソンヤード地区は、大規模な都市再開発プロジェクトによって誕生したエリアです。
元々鉄道の車両用地だった地区ですが、技術的に地下へ線路を埋めることが可能になり広大な地上部分や廃線になった高架鉄道上に新たなスポットができ、注目されています。ハドソン川沿いには車両用地がまだあり、かつての姿が残っています。
そんなハドソンヤード地区にはハイライン、ヴェッセル、リトルアイランドといった公園や屋外施設があります。見学を試みましたが、1月のNew Yorkは極寒で、どの施設も路面が凍結し危険なため入ることが出来ませんでした。
そのため屋内施設で面白かった施設を二つ紹介します。
Edge New YorkはNew York市内で最も高い位置にあるスカイデッキです。約335メートルの高さにあり New York市内を360°見渡せます。側面のガラスパネルは外側へせり出すように傾斜がついており身を乗り出すような感覚で下を見ることができます。一部床がガラス張りになっている場所もありスリル満点でした。
また展望台へ向かう道中もハドソンヤードの歴史やEdgeが入っている高層ビル「30 Hudson Yards」が都市環境へどのような影響を与えているか学ぶことが出来ます。展示の仕方もとても魅力的でした。
二つ目は、ヘザウィックの建築として有名なリトルアイランドの向かいにある、Pier57です。この施設は元々船舶と貨物のターミナルとして使用されており、今はGoogleが運営する複合施設になっています。入ることはできませんでしたが屋上には芝生の生えた公園がありリトルアイランドもよく見渡すことが出来るそうです。1階にはフードコートがあり、才能はあるが人種や性別などで機会を得にくい若手料理人のお店をいれており、活躍の場になっています。
A Reimagined Pier 57 New Food Hall and Community Spaces
A Reimagined Pier 57 New Food Hall and Community Spaces
フードコートを奥に進むと共用スペースがありGoogleの社員の方が打ち合わせなどをしていました。こんな景色のいい環境で仕事してみたいですね。
極寒の中飲むホットチョコレートは美味しかったですがNew Yorkで屋外施設を見学するのであれば暖かい時期に行くことをおすすめします。
吉田:今回の出張では、視察も兼ねて様々なホテルに宿泊したのですがその中でも印象に残った、ブルックリンにあるPenny Williamsburg (以下PENNYと記載)というホテルをご紹介します。
The Penny Williamsburg | Boutique Hotel in Brooklyn New York
In Brooklyn's lively arts hub, The Penny Williamsburg offers cozy comforts with kichenettes, pour-over coffee, & additional amenities for a pleasant stay.
The Penny Williamsburg | Boutique Hotel in Brooklyn New York (penny-hotel.com)
PENNYでは、地元の非営利団体であるLAND GalleryとPure Vision Arts と協力して、発達障害のあるニューヨーカーによるアートワークを飾っています。泊まったお部屋はこんな感じでした。
多くのホテルでは、ファイリングされた館内情報がデスクに置かれていると思うのですが、PENNYはコルクボードにそれらの情報がまとめられています。ルームサービスからWi-Fiのパスワード、周辺エリアの地図まで、必要な情報がここに集約されています。一枚一枚のグラフィックもとても魅力的で、それぞれのテイストを少しずつ変えながらも統一感のあるコルクボードになっています。
シャンプーやドライヤーの入った袋など、あらゆるものにホテルのロゴが入っていて、オリジナルのようです。ホテル内の案内サインや、非常時の避難経路が示された地図のグラフィックまでもこだわりを感じました。
今回はタイミングがなく利用しなかったのですが、客室の上にはレストランフロアがあります。テーブルウェアまでホテルのアイデンティティが反映されていて、一人ひとり違うテーブルナプキンの色は楽しい会話が生まれそうです。この日は、雪が積もっていて屋外のエリアは封鎖されていたのですが、天気が良ければ屋外で食事をとることもできるみたいです。 アットホームな過ごしやすさがあるホテルで非常に居心地がよく、ぜひまた訪れたいと思いました。
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