企業や集合住宅が複数のEV充電器を導入する際に直面する、電力コストや管理・運用の課題解決をするサービスです。EV充電器のIoT化とデンソーのエネマネ技術を活用し電力コスト低減や管理業務効率化を実現。充電環境整備の促進に貢献します。

―まず、EVECOM(イブコム)というシステムについて教えていただけますか?どのようなシーンで活用されるものなのですか?
戸田: 「EVECOM」は、電動車(EV)を使う企業や施設、マンションなどで、効率よく安心して充電ができるようにするためのシステムです。 建物の電力量を見ながら充電出力を調整することで電気料金の上昇を抑制したり、充電状況やユーザーごとの利用実績を見える化したりと、充電器を設置する管理者の業務負担を低減する機能が特徴です。
―ちなみに、EVECOMという名前はどういった意味なんでしょう?
「EV」と「エネルギー」、「コミュニティ」を組み合わせた造語です。EVECOMを中心に、人・EV・環境・サービスがつながり合い、新しいコミュニティや価値を創出する—そんな想いが込められています。
―この製品(EVECOM)が開発された目的や背景をお聞かせください
戸田: 「EVECOM」は、企業や施設、マンションなどにEVの充電器を設置・運用する側が、安心して充電環境を提供できるようにするためのシステムです。開発の背景には、カーボンニュートラル(脱炭素)社会の実現という大きな目標があります。EVを普及させるにあたってEVの充電環境の整備・普及も急務となっている一方で、充電設備を設置する施設側では、電力設備の増強や電力基本料金上昇などの電力コストが増加してしまうという課題を抱えています。
たとえば、商業施設の駐車場で複数台のEVに充電しなきゃいけない。でも、同時に充電すると一気に電力を使ってしまって、電気代が高くなってしまうという問題が出てきます。法人契約の電力は、月間で最も多く使った瞬間の電力量(ピーク)で基本料金が決まります。だから、そのピークを少しでも抑えられれば、大きなコスト削減につながります。EVECOMは、建物電力使用状況に合わせて充電時間を自動で分散し、ピークを抑えてくれるのが大きな特長です。

―他にも特徴的な機能はありますか?
他には、充電器の稼働状況、利用者ごとの利用実績など多様な情報を見える化する仕組みがあります。
これまでは、集合住宅で充電器を導入した場合に誰がどれだけ充電器を利用したか把握できず、EVを所有していない住民の方にも費用を負担していただくことがありましたが、EVECOMを活用することで、充電器を利用した方のみへ利用実績に合わせて使用料を負担いただく運用が可能になります。 また、EVECOMは運行管理システムや車両予約システムなど、他のシステムとも柔軟に連携できる設計になっていて、さまざまな運用に応用できるのも特長です。

―EVECOMのUI設計はどのようなプロセスで進められたのでしょうか?
吉田:まずは、EVECOMに関わる関係者様(ステークホルダー)の洗い出しと、ビジネスモデルを整理しました。
EVECOMを導入される企業の担当者や各施設の管理人、利用者であるEVユーザー、充電器の施工を担当する施工会社の方、デンソーの営業窓口など、EVECOMの導入から利用まで複数の立場の人が関わるので、それぞれの行動や目的を想定して全体のワークフローを整理していきました。
戸田:まだ仕様が曖昧な部分もありましたが、ワークフローを作ることで仕様を明確にしていけるようプロジェクトの関係者とすり合わせを進めていきました。
吉田:「こういう人がこういう操作をするから、こういう画面が必要だよね」といった感じで、必要な画面や要素を明確にしていきました。 フローを整理していくうちに、例えば「充電器の設置をする時には管理者側でこういう情報を入力できるUIが必要」、「施工業者にはメールのリンクから設定画面を開いてもらおう」など、運用方法やUIの細かい要素も見えてきましたね。

戸田:その後は大まかに固まったワークフローを基に、社内のデザインシステムを使ってUIを構築していきました。
吉田:今回、私はデザインツールであるFigmaを初めて使ったので、最初はやはり操作に戸惑うこともありました。ですが、以前戸田さんたちが作ったデザインシステムに基本ルールやUIパーツのライブラリ、テンプレートがまとめられており、そうした既存のリソースを活用できたおかげで細かい作り込みに時間を取られず、画面全体の情報設計を迷わず進めることができましたし、EVECOMらしさをどう表現するかにも意識を向けられました。
―ロゴやブランドのコンセプトは、どのようにして生まれたのですか?
戸田:EVECOMという名前自体は主幹部署が決めたものでしたが、そこからブランドのあり方を定義していくために、デザイン部主体でワークショップを3回実施したんです。 ミッション・ビジョン・バリューを見つめ直すセッションや、ブランドをキャラクター化して描いてみるワークなどを通して、関係者の価値観を可視化していきました。

吉田:もともとのデザイン部への依頼はエンジニアからだったのですが、ワークショップには営業の方にも参加してもらいました。進行は私たちが担当しましたが、多角的な意見を取り入れながら合意につなげられたと感じています。 いろんな立場からの声が出ることは、「自分もこのブランドづくりに関わった」と実感する人が増えるということ。自然と一体感が生まれたのではとも思います。
戸田:デザイナー側が勝手に作って後から説明するという形ではなく、営業やエンジニアの方々と意見をすり合わせながら一緒に考えていく姿勢が持てたのはすごく良かったですね。そのプロセス自体が、結果的に納得感にもつながったと思います。
吉田:最初から一緒に進めていくことで温度感のズレも出ず、自然と「チーム感」が生まれるというのはとても大きな収穫でしたね。 業務全体の流れも、ぐっとスムーズになった実感がありました。 「EVのある暮らしの輪を、広げていく」という言葉が、最終的にメンバー全員に共通するコンセプトになっていったのは、ワークショップの成果だったと感じています。

―ループ状のロゴが印象的ですが、作成の経緯やコンセプトについて教えてください。
戸田:EVECOMのブランドコンセプトを考えるなかで、ワークショップで出たさまざまな意見を整理していくと、「つながり」や「広がり」といったキーワードが自然と見えてきました。
吉田:冒頭にもありましたが、「EVECOM」の"COM"には、"Community"の意味も込められています。輪のように広がるネットワーク、共創が、このブランドの根幹なんです。ロゴのパーツを複数組み合わせた「EVECOM Net」という表現素材も制作し、ブランドの「広がり」を視覚的にも伝えられるよう工夫しています。
戸田:このロゴをベースにUIアイコンも作ったんですけど、ロゴデザインが特徴的かつ思いが込められたものになっていたので、展開がしやすくて。アイコンを作りながら改めてロゴがいいものだったなって思いました。



―無事にリリースを迎え、改めて感じたことや印象的だった出来事はありますか?
吉田:やっぱり、「ちゃんと公開される仕事ができた」っていうのがうれしかったです。
今回はWebでもリリースされて、世の中に見てもらえるカタチになったので、その達成感が大きかったですね。
戸田:うんうん。表に出ない仕事もたくさんあるので、がんばって作ってきた自分のデザインが社会に出ることは、やっぱりモチベーションになりますね !
Member
Creative Direction: Yuji Kawahara
Project Management: Yuji Kawahara
Art Direction: Tasuku Matsumura
Project Lead: Keisuke Toda
UI Design: Keisuke Toda, Ayako Yoshida
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