2025年7月31日と8月1日、デンソー名古屋オフィスにて、多世代ワークショップ「CCP AICHI(CO-CREATION PROGRAM AICHI)」が開催されました。
このプログラムには、県内外から集まった中高生・大学生・社会人あわせて約100名が参加し、世代を超えたチーム編成のもと、2日間かけて未来の通学通勤について真剣に語り合いました。
開会直後の会場には、初対面ならではの少し緊張した空気が漂っていましたが、プログラムが始まると、互いに笑顔で言葉を交わす姿が見られ、時間の経過とともに言葉が重なり合い、テーブルの上では活発にアイデアが行き交うようになりました。
デンソーデザイン部では、これまでも学生のみなさんと共創するプログラムを実施してきました。その背景には、私たちが日々強く感じている「世代を超えて問いを育て合うことの重要性」があります。
私たち「大人」は、長い年月をかけて経験や知識を習得することで、日常に転がる様々な課題を克服してきました。しかし、それゆえに、無意識のうちに見落としてしまう本質的な課題も存在します。それは、今まさに学生のみなさんがリアルタイムで直面している「生きた」課題です。学校生活にまつわる課題、社会への恐れ、アイデンティティへの問い。それらは、今を生きる若者だからこそ語れる声であり、私たちが耳を傾けるべき声だと考えています。
学生のみなさんの率直な問いや視点に触れることで、私たちは「そうだったかもしれない」「いつの間にか忘れていた」といった気づきや問い直しの機会を得ることができます。共創とは、若者を「育てる」のではなく、お互いが学び合う関係を育む営みです。
今回のワークショップでは、中高生・大学生・社会人が一緒にチームを組む「多世代編成」にチャレンジしました。これにより、実際の社会構成に近い形で課題に取り組むことを目指しました。会場では、世代や立場の違いから「どうしてそう思うの?」「自分には見えていなかった」という気づきが次々と生まれました。普段の生活では出会えない価値観に触れることで、参加者は自然と視野を広げ、アイデアも深まっていきました。
この体験は、デンソーデザイン部が大切にしている 「HX(Human Experience)」 という考え方につながります。HXには2つのポイントがあります。
ポイント1:思考を拡張する
目の前のユーザーだけでなく、その周りの人々や社会、地球環境にまで視野を拡げて考えること。
ポイント2:思考を反転する
自分のアイデアが、誰かの不便を生んでいないか、様々な影響に目を向けること。そして数年後や数十年後に問題にならないかを考えること。
異なる世代の人と出会うことで、こうした「思考を拡張する」「思考を反転する」きっかけが自然と生まれます。今回の多世代編成は、まさにHXを実際に体感できる場となりました。
今回のワークショップでは、もう一つのチャレンジとして、AIの技術を取り入れました。これは、参加者が出したアイデアを短時間でビジュアルに変換することで、議論のスピードと深さを同時に高めることを目的としたものです。
たとえば、「移動中にしたかった事が全部できる個室を備えたモビリティ」というアイデアに対して、AIが即座にビジュアル案を複数生成。イメージが具現化されることで、チームメンバーの理解が深まり、新たな意見が飛び交うきっかけとなりました。参加者からは「想像だけで終わっていたアイデアが『共有できるもの』になったことで、次の議論がスムーズになった」「たくさんのアイデアが出せた」といった声が上がり、AIと人の協働による共創の新たな形が見えた日となりました。
ワークショップの締めくくりに、各チームが生み出したアウトプットを一堂に並べるギャラリートークを実施しました。参加者は自分たちのアイデアを展示し、他の参加者から自由にコメントや質問を受けます。この時間は、単なる成果発表ではなく、「共感できる点」と「問い直すべき点」を探る場でもあります。自分たちがよいと思ったアイデアが、他の立場から見るとどんな課題をはらんでいるのか。参加者だけでなく見学の方も含め、全員でそれを直接やり取りできたことで、各チームにとって大きな学びとなりました。
CCPワークショップを通して、世代を超えた対話や新たな視点、そしてたくさんの問いが生まれました。私たちは改めて、学生のみなさまとともに考えることの価値、そして多様性がもたらす可能性を実感しています。
問い続けること。学び続けること。変わり続けること。
それが未来を形づくる、デザインの原動力になると感じています。
Member
Project Management: Hiroyuki Yamamoto
Project Lead: Tomoe Ota
Member: Tomomi Hotta
AI Technical Support: Chihiro Miyai,Tomomi Hotta,Hiroki Jonen
Movie Direction: Tomoe Ota
Movie Design: Miyu Kojima,Kiyoshi Kitamura
Photography: Miyu Kojima,Kiyoshi Kitamura
Support: Toshifumi Mori,Yukihiro Kajita,Yuji Tsuchiya,Yuji Kawahara,Akira Okamoto,Tasuku Matsumura,Ayane Tezuka,Mai Sugawara
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