デンソー内の生産現場で発⽣した不良品を記録するシステムです。 これまで不良品発生を記録し、生産調整や損失計上を行うために使用されていた黄色い紙伝票、通称:黄伝(キナデン)の作業をモバイルアプリ化することにより、紙の削減や利用者の負荷軽減を目指し開発しています。 ただアプリ化するだけでなく、これまで紙帳票で行われていた作業の業務フローから見直すことや、紙の書きやすさ・修正のしやすさをUIデザイン上にも反映することで、生産現場に受け入れられるDX化を狙ってデザインしました。
⻩伝モバイルはデンソーのすべての⼯場で利⽤されることを⽬指していたため、複数の⽣産現場の要望や働き⽅の調査から始めたのですが、調べるうちに現場の抱えている課題は想定以上に多種多様であることが分かってきました。部署やラインによって扱う製品や製造⼯程が異なるため、⽣産する製品の種類も数種から数十種と幅があり、不良品の発⽣する頻度も⼤きく異なっていることや。それらを管理する現場の帳票や独⾃のシステムが作られていたために、課題の整理が難航しました。
この状況を切り抜けるため、業務フローの把握と課題を収集・分析するカスタマージャーニーマップ作製では、一つにまとめる予定だったジャーニーマップを部署ごとに作成する⽅針に変更し、それぞれの現場に寄り添って切り⼝を細分化・整理していくことで、共通する業務フローの問題点を発⾒し、解決すべき課題を⾒極めることができました。
デザイン表現の検討を進めるにあたっては、⽣産管理部署との会話の中であがった、ミスが無いよう「噛みしめるように⼊⼒してほしい」という声に着⽬し、そのキーワードを体現するUIデザインを模索していきました。
その実現手段を探るためにデザイン部内のユーザーレビューを専⾨とするチームと連携し、脳波測定器を⽤いて様々なデザイン案に対する感情分析を実施したところ、⾊味の微妙な違いによってデザイン案に対する感情が異なってくることがわかってきました。様々な⾊味を⽐較する中で、クール寄りの配⾊においてストレス度や興味度・集中度・沈静度が他の案より高くなることがわかり、適度な緊張を感じながら集中して利⽤できるのではないかと考え、「噛みしめるように⼊⼒する」UIに最適な配⾊としてクールグレーをメインカラーに採⽤しました。
⽣産現場で様々な人に使われる業務システムのUIデザインとして、何より視認性に配慮することと、登録された不良品データの申請・承認などのステータスを明確に伝えたいという思いがありました。そのためにまず各ステータスに合わせたカラーを⽤意し、各カラーと背景⾊のコントラスト⽐や現場の使用環境を考慮してダークグレーを背景⾊として採⽤しました。
しかしカラーで種別を伝えた場合に起こる問題として、⾊覚異常の⽅が判断できない可能性があります。⾊覚異常の⾒え⽅にもいくつかパターンがあるのですが10万⼈に1⼈と呼ばれるT型⾊覚だとしても従業員数を16万⼈も抱えるデンソーグループではその⼀⼈に出会うかもしれないと考え、その⼀⼈も取り残さないようT型⾊覚にも対応し、かつウェブコンテンツのアクセシビリティーガイドラインであるWCAGの達成基準レベルAAをクリアできるコントラストが確保されたステータスカラーの組み合わせを細かく検討していきました。最終的にはカラーだけでなくテキストも組み合わせ、どの社員が扱っても正しく認識ができるよう配慮したデザインを採用しました。
また生産現場への導⼊後も継続的にアプリに対する意見を集め、本当に現場が使いやすいUIデザインの開発を進めていきます。
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Creative Direction: Yukihiro Kajita, Keizo Sato
UI Design: Keisuke Toda, Satomi Hosokawa, Masaki Nankaku
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