停車時クーラー
Everycool2023.10.16

トラックでエンジン停止時に使用できる電動式のクーラーです。 運転席でも後方のベッドスペースでもすぐに冷たい風を提供します。

停車時空調プロジェクト

(笠井)このプロジェクトは、開発当時は停車時空調と呼んでいました。トラックの助手席の後方に設置する後付けのクーラーのようなものです。トラックの運転手さんが車の中で休憩をするとか、荷物を運んでいるときの待ち時間などに、エンジンを切った状態でも冷たい風を浴びて休憩ができるようにと考えられた製品です。技術部からのもともとの依頼は、いわゆる世間一般でいうデザイン、つまり製品のスタイリングの相談でした。ただ、単純にかっこよくしてくれというだけではなくて、デザインの観点で便利になる、使い易くなるとか、リモコンをどこに置いたらいいのかなとか、あるいは狭い運転席に置くものなので、デザインの力で筐体をより小さく見せるなどの付加価値も期待をされていた記憶があります。
プロジェクトとしては1年前(2022年夏頃)くらいにスタートして、最初は僕一人でやっていたんですけれども、途中で僕が異動することになったので大山さんと石川さんにバトンタッチするかたちになりましたね。
(大山)タイミングとしては、笠井さんの方で風を出す筐体側はほぼほぼフィックスしていたんですけれども、コントローラーのグラフィックや拡販活動に向けてなにをやっていくか、みたいなところを引き継いでやっていきましたね。

小さくする、小さく見せる
スタイリングの検討

(笠井)狭いトラックのキャビン内に設置される製品なので小型化が求められていたんですが、デザイン部に依頼が来た時、機械的な制約で既に中身の設計とか部品の配置がほとんど決まってしまっていて、大きく構成を変えることはできない段階だったんですね。なので、デザインとしては、「本当に『小さくする』」と「小さく『見せる』」の二つの軸で進めていきました。
まず「本当に『小さくする』」ために、「ちょっとこの部品動かせませんか」「ねじの位置とか変えられませんか」というように、少しでも小さくするためにはどうしたらいいか、設計者と議論していきました。トラックの運転席の後ろに、仮眠ができるベッドみたいなスペースがあって、そこに設置される製品なので、例えば仮眠をするときにできるだけドライバーさんの足の邪魔にならないように、足が当たりやすいところを大きく削るような面構成にできないかな、とか考えていました。
「小さく『見せる』」ことに関しては、大きな正面向きの面と側面の角を大きく削り傾斜をとってできるだけ見た目を小さく感じさせるなど、圧迫感を感じさせないためのスタイリング検討に注力してやっていたような気がします。
検討は主にCGやペーパーモックを使ってやっていきました。スタイロとかスチボで実物大模型を作って、壁に貼って検討していった感じですね。立派な試作品を作るというよりは、わりとライトにやってたような感じがします。
(石川)笠井さんのペーパーモック、めっちゃ綺麗!って思ったのを覚えてます。
(大山)あれは相当レベル高かったですよね。スチボの接着面が斜めにカットされていて、ペーパーモックのわりに精度感がありました。
(笠井)ああゆうのやってるときが一番楽しいですね。個人的に。

時間軸と環境を含めて検討する

(笠井)デザインの過程で、強く印象に残っていることがあります。小さく見せる形状を3DCGで検討していて、大山さんにもデザイン案を何パターンかつくってもらって、CGのトラックに載せてVRゴーグルで見てみるっていうのをやったんですね。そうしたら、製品単体をCAD上で見たときに一番小さく感じると思っていた意匠が、VR空間のトラックの中にでは、光の差し込む方向や周りの壁との関係性とかで、逆に大きく見えるというか主張してくるということがあって。やっぱり使われる場所に設置してみないと正しいスタイリングの判断ってできないなと感じましたね。デザインの教科書的な出来事だなと感じました。
(大山)VRを使うメリットとして、環境を変えられるっていうのが大きいです。プロダクト自体がどういう印象で見えるのかっていう使い方だけでなく、環境によってどう印象が変わるのかも今のプロダクトの検証には重要な要素だと感じています。たとえば今回の製品なら実際の車の中、家で使うものならリアルな住宅環境とか。
(笠井)そうなんですよね。朝昼夜と、照明環境をVR空間の中で変えて、西日が差してきたときや朝方に製品がどう見えるかを検証したんですけど、実際の使用環境とか、時間とか日差しとかと合わせて見るというのが改めて大事だなあと思いました。

プロトタイプで説得する

(石川)この製品のコントローラーは、機能的な制約があり一つのボタンで二つの機能を操作しなきゃいけなかったりとか、結構操作系が複雑だったんですよね。構造としては中身が完成している状態だったので基本的にボタンの位置は変えられず、そこにグラフィックを載せていかにわかりやすくしていくかという検討がメインでした。アイコンを置く位置が少し変わると、結構見えてくる意味が変わったりして、細かい位置の調整が効いてくる仕事がいい経験になりました。
(大山)あと、そもそもトラックってやっぱり明るいところじゃなくて、当然夜とかも使うので、視認性の面も重要でしたね。
(石川)目立たせるボタンをどれにして、情報の優先順位をどういう風に見せるかたくさん検討しましたね。ずっと自分のトラックに載せて使う装置なので、だんだんユーザーも慣れていくんですよ。なので、慣れていくことも考慮して、じゃあまずスイッチONのボタンの位置がわかれば、他のボタンはその下にあるからわかるよね、みたいなことを考えて、目立ち度合いを決めていきましたね。いらない文字要素をできるだけ減らしたくて。
(大山)石川さんとそれを技術部に対して何度も説得しましたよね。技術部の方は、もともと情報を全部入れたいと言っていたのですが、それを行うと、一見するとすごく丁寧なんですけど同時にわかりにくさも出てくる。それを説明するために、石川さんが一連の流れをスマホでさわれるようにしてくれましたね。
(石川)そうですね。XDで作ってスマホで簡易的に操作できるようにして、説得しましたね。
(大山)ユーザーの一手目ですよね。最初にどこを触れば良いかそれだけ伝われば、次が想像できる。言葉とか資料では伝わらないので、自身で触れて操作することで、確かにそうだねという実感を技術の方と共有することができ、次のステップに進められました。
(石川)最終的にはかなり前向きに乗ってくれてよかったです。
(大山)ですね。味方になってくれましたよね。LEDの色とか、コストギリギリの中でも、より良くするためにコスト変わらない範囲で変えられる部分を見つけてもらって最後まで調整しましたね。

ネーミングのプロセス

(石川)このプロジェクトではネーミングもありましたね。
(大山)社外のアンケートや生成AIを活用してEverycoolという名前を決めていきましたね。社外のアンケートは、実際に長距離トラックを運転する人と、運行管理者等、製品を導入する立場の人をメインにアンケートを取りました。
生成AIの使い方としては、キーワード出しの時に使いました。一番最初に製品に関連するキーワードをいろんな方面から(機能、サービス、社会的位置づけなど)出して、それを組み合わせたりしたんですけど、プロジェクトメンバーだけではキーワードを出し尽くしてしまったときに、キーワードの組み合わせで言葉を生み出すっていうところだとか、こんな想いの場合どんな製品名あるかなっていうのを生成AIに新たなメンバーみたいな感じで色々考えてもらいました。
生成AIに出してもらったものの中で、ばっちりコレっていうのはなかったんですけど、そういう組み合わせとか語呂もあるんだっていうのは参考になりましたね。
そして多くの候補から、ネーミング案を絞り出して、社外と社内でアンケートを実施することでユーザーが思う製品イメージを理解したうえで、技術部の方と最終的な判断をして、Everycoolという名前になったという経緯になります。

HX視点で考える

(大山)笠井さんが実物のトラックのベッドに実際に寝てみて体験したりとか、VRでトラックの車室内を再現して運転席やベッドからどう見えるか確認したりなど、できるだけドライバー目線になりきって確認するっていうのをやってて良い視点だなと思いました。また、それだけでなく、運行管理者目線で物事を考えて、「環境に対して意識を持っている会社です」とアピールできるステッカーの設定や、SNSの活用による普及の提案。交通ジャーナリストの方との運輸業界についての対談など、ドライバーや運行管理者、世の中からどう見えてるかなど、広い方面からものごとを想定して進めていましたよね。
(笠井)そうですね。エンジンを止めた状態でもクーラーのように冷たい風が出るので、環境にも、運転手にもやさしいし、エンジンを止めるのでうるさくないし排気ガスも出ないので、周りのお家の人とかサービスエリアに停まっている車とか、そういう周りの人にもやさしい。運送会社にとっても燃費がよくなるからみんなハッピーと。そういううれしさを実現できるといいですね、というのを技術の人とか営業の人たちと話していましたね。
(石川)いろんな視点を取り入れる、という意味ではプロモーションビデオもそうですね。
(大山)拡販用のプロモーションビデオを作ってたんですけど、想定される用途が色々あったんですよね。例えば今回グッドデザイン賞の応募資料にも使ったんですけど、一般の人にも製品のメリットがわかるように伝えたいし、WEBとかにも使えるようにしたい、事業所に持って行って営業の人の説明にも使いたいと。だから、一般の人(アイドリングストップクーラーを知らない人)から、すでにどういうものかは知っている人まで、あらゆる知識レベルの人が見ることを考える必要があったんですよね。
自身がユーザーになってみたり、買う人、売る人、取り付ける人、説明する人、知る人など様々な視点になりきってどうするべきかを皆で考え、答えを求めていくことをひたすら行っていました。
(笠井)そんな努力の甲斐もあってグッドデザイン賞も取れましたね。本当におつかれさまでした!