[出張報告]
滋賀FUTURE THINKING WEEK2025.05.13

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滋賀県彦根市で開催されたイベント、滋賀FUTURE THINKING WEEK。

2025年3月28日、デンソーのテクノロジーを社外の共感者とともに探索し社会課題解決につなげるインハウスアーティストの3人で参加してきました。

このイベントは、かつて銀行だった建物を再生し、未来の銀行というコンセプトのもと、テクノロジーやサイエンス、アートを使って地域課題に向き合う試みです。
会場では、滋賀各地で行われているプロジェクトが紹介され、未来を想像し、語り合い、動き出すきっかけが詰まっていました。

もしもデータに身体を与えたら? 
『FLOCK OF』

会場に到着してすぐ、空を泳ぐ銀色の魚たちのインスタレーションがはじまりました。

「もしもデータに身体を与えたら?」という問いかけを形にしたのが、bit.studioによる『FLOCK OF』です。この作品は、銀色のバルーンでできた魚たちが空中を自在に回遊し、まるで生き物のように滑らかに動きます。

空間を自由に泳ぎ回る魚たちは、実は滋賀にまつわるデータを元に動きが生成されていて、見えないデータを視覚的、感覚的に体験できるようになっています。
普段は目に見えない情報が、まるで生き物のように空間に現れる。その様子に、来場者は自然と足を止め、見入っていました。

実はこの作品、半年前にオーストリア・リンツで開催されたアルスエレクトロニカで見たものでした。日本でも見られるとは思っていなかったので、もう一度みることができて嬉しいです!

ウォーター・セントリック 
人間中心から「水」中心へ

「滋賀FUTURE THINKING WEEK」のイベントのテーマは「ウォーター・セントリック」。
人間中心ではなく、「水」を守ることを起点に社会を考えるというコンセプトです。

高島市や木之本町、米原市、西大津など滋賀各地で行われているDAS(データ・アート・サイエンス)プロジェクトが紹介され、環境データの活用やアート的な視点を通じて、地域と自然、そして人の関係性を再構築するヒントが散りばめられていました。

もし企業の価値を決めるのが「水」だったら? 
びわこブループロジェクト

企業の価値を測る基準に、「水」が加わったら ――
そんな問いを起点にした「びわこブループロジェクト」は、市民や企業の資金を「びわこブルー基金」や「預金」として銀行に預けることで、地元の水辺を守る事業へと投資・融資が行われる仕組みです。

注目する点は、金融商品のリターンが「WCS(Water Centric Score)」と呼ばれる水環境の健全度に応じて変化する点。
水がきれいになるほど、経済的な価値も高まる。そんな循環型のモデルが描かれています。

また、河川の水から検出される微細な生物のDNAをもとに、水辺に棲む生きものの多様性を数値化する「環境DNA調査」も導入され、水の状態をより精緻に可視化できるようになっています。

数字や指標では測りきれない価値が、地域の金融や自然と静かに結びついていく。
そんなこれからの経済のかたちが、ここから始まっているのかもしれません。

おわりに。
滋賀から生まれる、
新しい社会のヒント

今回のイベントを通して「水」という一見当たり前に思える存在が、こんなにも多くの可能性を持っているということ。そして、水を起点に、経済も社会もそして価値観そのものも変えていくというこのプロジェクトの未来志向の取り組みとその可能性に大きな刺激を受けました。

これから訪れる未来に対して、デザインやクリエイティブができることは何か?

イベント参加で得たインスピレーションをもとに、引き続きリサーチと実践を重ねていきたいと思います。